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黄桃缶詰
SINCE 2015
活動再開!2019年4月発表をめどに小特集「曖昧なる境界線」が決定!(1/28)
はる「ロジウラ」、misty「時間喰いのモービーディック」の原稿を掲載しました!(11/25)
しばしの間休載。(9/12)
汀は遠く・天使は歌う鋏に合わせて
阿部橘
汀は遠く
照明が遠のきぬるま湯の底で発泡してゆく肌を見ていた
拭われた背中に残る透明の鱗は海で産まれた名残
シーツ擦る足の裏から潮騒が生まれてくる朝汀は遠く
青空に白く抜けてる鳥影を摘まんだ影が焼けつく砂浜
波音があなたの声をさらうから焼けつく砂の熱が愛しい
きょうだいが陸に追われた日を思い枯れ枝砂に滑らせてゆく
水かきを愛でるあなたに囁くのわたし前世は人魚だったと
天使は歌う鋏に合わせて
MISSINGはにかむ祖母が張り紙の中で流した涙は乾いて
直線の日差しが割った道の向こう影がゆらいだ何かを叫んで
ハラの実を繋ぎ捧げる聖書台ただ一人立つ斜陽のチャペル
山ほどのプルメリアから鼻を出し溺れていたのは祖母だったもの
丁寧に透明フィルムを掛けられた喉仏に貼る祖母の写真を
鉢植えに骨を沈めた夜に咲くアンスリウムの顔した天使
アーモンドみたいな月を背負い刈る天使は歌う鋏に合わせて
明け方にアンスリウムが羽ばたいて燃え尽きるとき懐かしい匂い
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