黄桃缶詰
SINCE 2015
活動再開!2019年4月発表をめどに小特集「曖昧なる境界線」が決定!(1/28)
はる「ロジウラ」、misty「時間喰いのモービーディック」の原稿を掲載しました!(11/25)
しばしの間休載。(9/12)
桃缶三号
桃缶3号 表紙:らぱん
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特集 私はコレでできている
《特別寄稿》
イラスト
連載作品
特集に寄せて
この物語たちは、黄桃という瑞々しい果実の名を冠した僕たちの、他己紹介の物語。やぁ。見つけたよ。ここに、居たんだね――
鏡の前でぼそり、つぶやく。 ――お前は、誰だ? この行いの結末について詳細に語る必要は、多分、ない。ここを訪れる方はその行いの危うさを、愚かさを、十分に承知していらっしゃることだろう。 でも、それでも私たちは、いつの間にかつぶやいている。うそぶいている。 ――私は、誰だ? その問いかけに、意味なんて、多分、ない。あるとしたら、それは小、中学あたりで卒業してなきゃいけなかったはずの、哲学にも至れない、なんちゃって萌芽。いつか来る、来てほしいその日を楽しみに水をやったのに、肥えるだけ肥えて、ついに己を満たすことのできなかった自意識。
だから、この文字たちは、紡がれた言葉たちは、きっと―― 僕たちは――どこかで見てきたような汚物に塗れた姿をしているかもしれないし 自分たちは――どこかで聞いたような白鳥に憧れているだけの、ただ醜いだけのアヒルかもしれないし 俺たちは――キモっ、キショっ! の一言に片付けられる薄っぺらい存在なのかもしれないし きっと――だからこそ愛おしく、美しいかもしれないじゃないか!
この物語たちは、上手に言えないまま抱え込み引き摺ったまま、やっとここまで歩んできた僕たちの、自己紹介の物語。見つけてくれて、ありがとう。
上手に歌えないから、ここで静かに叫びます。見つけてくれて、ありがとう。
この物語たちが、このページを訪れてくれたあなたの、君の、貴殿の、慰めとなり、励ましとなり、勇気となり、血肉となり、――そして将来のあなた自身になれたなら。いや、単なるきっかけでも構わない。そういう存在になることができたなら、それ以上の幸福はありません。
常磐 誠